天平聖武絹と総天蚕糸の訪問着

先週金曜日、月一のおけいこの帰りに覗いたギャラリーで、『天平聖武絹』というのを見た。

正倉院に収められている、聖武天皇の時代の賦役令の調として納らていた赤絁(あかあしぎぬ)を復元する事業に成功した織元 牛田織物さんが、その再現過程で習得した技術を使って織った反物を『天平聖武絹』というらしい。

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この赤い布が復元した「赤絁」。写真だと正確な色が出ないのだが、実物はもっと深い赤で、穏やかな光沢がある。箱には、復元事業にかかわった方々のお名前が書かれていました。

この絁の復元するために、天平の時代に行われていたとされる生繭から座繰りで引き上げた糸を、自然の方法で精練して、茜で染めたということだ。座繰りの糸のふっくらした感じが色に深みを与えるのだとか。

もっとも、専門家に言わせると、完全には復元したとは言い難いのだそうだ。現在の蚕は、昔に比べるとかなり太い糸を吐く。当時と同じ細さの糸はできないのだそうだ。(そういえば、皇后道子さまが20年間育てた小石丸の糸を使って、正倉院の絹織物が復元されたなどということもあった。)

天平聖武絹は、基本的には色無地のようだ。お茶をなさる方に人気だとか。

そして、これが目を引いた。鳥取県の天蚕繭を使用して織りあげられた総天蚕糸の訪問着。経糸緯糸もすべて天蚕糸だという。
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一番下の写真がその繭。天蚕の繭の色は精錬工程で抜けてしまうと以前どこかで聞いたことがあるのだが、飾られていた着物は、薄緑がかった黄色い繭の色を残しながら、 ちりめん地の柔らかい風合いをしていた。