ジャパンブルー

藍染の展示会に行ってきた。

藍にはインド藍、ヨーロッパのウォード、琉球藍、阿波の藍染に使われる蓼(タデ)藍などがある。琉球藍はツネノマゴ科の多年草植物、蓼藍はタデ科イヌタデ属の一年生植物である。

いずれの藍も藍色の成分インディゴを含む。
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成分の構造が分かってしまえば、しかも意外と単純な構造なので、1900年ごろには合成インディゴが製造だれるようになり、瞬く間に天然の藍は合成染料にとってかわられてしまった。

化学式で書いてしまうと味もそっけもないのだが、天然の藍はその発酵過程などで混入する不純物が色に奥行きを加える。純粋なインディゴ、すなわち合成染料のインディゴで染めたものとは違う風合いがあるといわれている。しかし、残念ながら私にはまだよくわからない。

今回の展示会は阿波藍。

阿波で藍染めが盛んにおこなわれたのは江戸時代から明治時代。その後は合成染料に圧されて衰退。その後、阿波藍を保存・振興しようと、人々の阿波藍復活の気運が高まり、1966年を境に復興し、現在は少ないながらも一定の生産量を保っているとのこと。

阿波藍染めは、蓼藍を「すくも」というものに変えて、それを染料として用いる。すくもは、藍の葉を乾燥させ、水打ちと攪拌を繰り返しながら約100日をかけて発酵させたもの。高度な技術と手間が必要なため現在は徳島以外では見られないという。

こうして、染料のすくもが用意され、次に染の工程に入る。

すくもと天然灰汁を藍瓶の中で発酵させて染液を作る。この作業を「藍を建てる」というのだそうだ。天然素材だけで作る藍染は、気温やさまざまな条件によって、仕上がりがまったく異なってしまうため、長年の知識と経験が必要なのだとか。微生物という生き物を相手にしているのだから、そうなのだろうと思う。

と、「天然灰汁発酵建て藍染」とはこんなに手間暇をかけて染められたのだとレクチャーとも言い訳ともつかぬ話をききつつ、新作きものを見せていただいた。


深い群青色にそまったようなのにはあまり興味はなかったのだが、近頃、縞に心が躍る私の目に留まったのが、これ。

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楽天で2万円くらいで売っていそうだけれど、150万円だそうだ。
糸を染めて織った結城紬だったので90万円くらいかな? と思っていたのだが、予想をはるかに超えていた。天然藍染めなので、染めた糸の中から1本1本、同じ色調の糸を選り分けて織るのだとか。

90万円でも私の購買能力をはるかに超えているのだが、150万円には驚いた。湯通して結城紬の光沢とか質感が伝わっていたら、その値段に頷けただろうか?

どんなに手間暇がかかっていても、縞の着物ってただの普段着だし、そもそも庶民の着物だ。それに150万円の札を付けて商売をする世界、それが呉服業界だ。廃れるべくして廃れていくのじゃないかと思う。

そうは言っても、伝統的な手法で作り上げていく作り手の作りたい気持ちもわかる。伝統工芸同士のコラボレーションも魅力的だ。

そんなジレンマの中、結局、私は楽天で、合成インディゴで染めた縞柄の木綿紬の反物を買って、和裁に挑戦する道を選ぶのだった。

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遠州木綿、1反 6500円也。これでこそ普段着!