本場結城紬と重要無形文化財

先日、お世話して(もいるし、貢いでも)いる呉服屋さんに行ったら、ぜひ私に見せたい珍しいものがあると、本場結城紬の反物を出してきた。

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重要無形文化財の貴重なものだ、と目を輝かせて写真の向こう側の兄ちゃん二人が言うのだが、証紙は茶色で「高機」との記載。

????? と思う私。彼らは決して嘘を言っているのではないだろう。ただ、呉服屋さんなのに知らないだけ。本場結城紬重要無形文化財に指定された方法で作られた結城紬との区別がついていないのだ。

てか、重要無形文化財結城紬の反物なんてものは、そもそもない。
重要無形文化財に指定されているのは製造技術であって、品物ではない。あるとすれば、重要無形文化財に指定された技術で作られた商品である。

ただし、15年くらい前までは重要無形文化財に指定された技術で作られたものには、「重要無形文化財」という証紙が貼られていたので、勘違いもあったかもしれない。

結城紬の製法が重要無形文化財に指定されたのは昭和31年。その当時の技術が文化財指定の条件。
その条件は材料、染め方、織り方の3つ。
経糸緯糸ともに真綿より手つむぎした無撚糸を使用すること(材料)
② 絣模様を付ける場合は手くびりによること(染め)
③ いざり機(地機)で織ること(織)

手くびりは地色の濃い糸に絣をつけるのには有効だけれど、淡い地色に濃い絣模様をつけるのは難しく、コントラストがでにくい。

地色の濃いきものが主流だった時代には問題なかったのだけれど、白地の紬が流行るようになった昭和30年代以降は、白地に絣をつける際に、染料を直接擦り付ける方法がとられるようになった。でも、この染料を擦り付ける方法は重要無形文化財にに指定された方法ではない。

手つむぎの糸を使った地機の平織であるにも関わらず、重要無形文化財の証紙が貼れない。難しい技術で苦労して作っても価値が低いとみなされてしまう。ということで、産地側は2005年に、「重要無形文化財」の文字のない「本場結城紬」の証紙に切り替えてたという経緯がある。

ちなみに、本場結城紬は以下の4種類

地機の平織
地機の縮織
高機の平織
高機の縮織

地機の本場結城縮は特に高価でなのだが、重要無形文化財の方法で作られたものではない。本場といえば重要無形文化財というわけではない。まして、高機で織ったものは。

呉服屋さんならちゃんと勉強しておこうね。兄ちゃん。

とは言え、せっかく俄か仕込みの知識をひけらかしながらわざわざ見せてくれたので、当ててみた。

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私的には、帯のほうが気になったのだった。

そして、この日の装い
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夏大島の着物に能登上布の八寸帯